アイソニアの騎士とエランドル(十)/朧月夜
 
「お前は、人間の未来のために、一人の男を殺したというのか?
 俺は、決してお前を許さない」と、アイソニアの騎士。
「しかし、対話なくして、お前たちが虹の魔法石を手に入れることはないぞ?
 良いのか? エインスベルの命が救えなくとも?」

アイソニアの騎士は、息を呑み込んだ。
「一体何なのだ? 虹の魔法石とは……?」
それは、ヨランも知りたいところだった。
ここ、ハーレスケイドにのみある魔法石。それはヴェールに包まれたものだった。

「良かろう。今はすべてを教えよう。虹の魔法石とは、
 すべての魔法石の元になった原石のことだ。そこから魔法素子が誕生し、
 お前たちが生活に用いる魔法石も生まれた。発端なのだ、魔術の歴史の」

「歴史……」ヨランが呟く。「それは、言語崩壊以降のことでしょうか?」
「いや、違う。言語崩壊以前にも、ほぼ千年にわたる魔術の歴史があった。
 魔術とは、科学の発展の末に生まれてきたものなのだ」
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