明るい闇の中で(七)/朧月夜
「ふふ。罪人ごときが何を言う。今、俺がお前に従うふりを見せたとして、
本当に俺がお前に従うと思うのか? エインスベルよ。
世界とは、為政者の知恵によって成り立つものだ。理性によってではない」
「それでもかまわない」──エインスベルは、ひとつため息をついた。
その「間」が、フランキスをいらいらとさせる。
(いっそのこと、このまま俺を殺せ)と、フランキスは思う。
それはたしかに、この両者の間で共有された思いであったろう。
エインスベルは、フランキスを殺したい、愛する者のために。
だが、その愛する者はいまどこにいるか? その幼な妻、婚約者を救おうとしている。
エインスベルの思いは、どこにも帰着し得ないものだったのである。
それだからこそ、「国家の行く末」などという、大層なものを持ち出そうとする。
それは、エインスベルにとっての勝利でもあり、敗北でもある。
この、フランキスという千人隊長を今は、自分の意のままに従わせること。
それが喫緊の命題であり、エインスベルにとっては「逃亡」でもあった。
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