still/塔野夏子
それでも身体は
どこまでもこわれゆくこぼれゆく
ものでしかなかった
だからせめて
心と呼ばれるものを
身体のすみずみまでしみわたらせて
身体のそとに
しるしを刻んでゆく いくつも
いくつも それがたしかなしるしなのか
脆く消えてしまうしるしなのか
知らないままに
光る術を持たない身体は
少しでも光に似たものを
放とうとしながら
こわれゆきこぼれゆきながら
どこまでも
ふるえながら
その刹那刹那のしるしが
遠く近く 波紋することを
祈りながら 誰かの波紋に
またふるえながら
光に似たものがあつまって
光に変わるかもしれない処へ
どこまでもこわれゆくこぼれゆくまま
少しずつ近づこうとするのだった
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