「夏の思い出」の詩人、江間章子/藤原 実
 
います。でも、それは俳句の世界での約束事。それを詩においても、この「夏」は季語の「夏」なんですよ、とサラリと言ってしまえるのは彼女が自然派の抒情詩人ではなく、戦前のモダニズム詩の理念を自らのルーツとする詩人であったからでしょうか。

同じく『<夏の思い出>その想いのゆくえ』で「私たちの夢は<詩>であった」と詩人として生き始めた若き頃を回想しています。
{引用=
日本は第二次世界大戦へ向かう時代であった。異様な気配が感じられても、それが戦争へとまっしぐら進んでいるということを、だれが看破できただろう。
・・・日本がアジアを制覇しようとしていた野心とは、全く別な場所にいて、私たちの書く詩はコ
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