しがらみのふるさとに/山犬切
二つの考えを頭の中に並べて思うが、母親は人間の自己形成にどれほど関係あるのだろうか? 僕の母親はとっくに死んでいるが僕の宿命はどんなものなのか 吉本の本では三島由紀夫の不幸な生い立ちが例として語られていた それによると三島は相当問題のある家庭環境で育ったらしくそれが彼の文学作品にも深い影響を与えていたという 具体的には三島の祖母は家族の主導権を全面的に握って子ども時代の三島をほとんどずっと母親から引き離して自分の監視下におき、わずかに授乳のあいだだけ母親の手に預けることを許可したらしい そういうわけで三島は幼少期に母親の愛情にまるで恵まれなかったという大不幸の持ち主だったそうだ たしかにそんな異
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