スズメバチ(SS私小説)/山人
 
ないかというのもあるだろうが、一応努力してます感は与えることができたであろう。川村は、まずまずだったのではあるまいか?とそこそこの感触を得ていた。しょせん、自分には料理の基礎も、技術もない。あるのは真心だけという、くすぐったい気持ちしかなかったが、まさにそれなのだろうという気がしていた。なにも武器は無いけれど、素手でも戦う準備は出来ている、そう考えていた。

 九月十二日、川村の第三の職種、登山道整備の最終日だった。守門岳から作業を終え、妙な音に気付き、そこに視線が貼りついていた。地上三メートルのブナの大木の洞からスズメバチが盛んに出入りしていた。朝はここを通り、草を刈りながら通過したはずだが
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