ピカソ/soft_machine
 
神話になぞらえ視界をねじり
燃焼する画角から身を伏せる男
口笛と銃痕を残すように
霧の中から淡い筆がきて
何もかもを塗り潰す
腐れるあらゆる匂い

精神分析医は語る
線と色と画触のフォルム
彼は決して特種な鳥ではない
単に反射神経に優れた感情の自在者
けれど自己破壊を待たず
蠢くこそが最大の光

ひとつ処に留まらぬ砂の尾根に立ち
空瓶で澱する絵具を練り上げるピカソ
いつ迷い込んだのか定かでない
柔らかい、一枚の迷宮
あるいは無限記憶の鍵が結晶した
南天に渦まく白夜
この誕生星は彼だけのものだ


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