時が溶ける/ホロウ・シカエルボク
暗く湿った歩道
街灯の灯りに照らされて
所在無げな影が時折長く伸びる
ゴム底の足音は小さく
重さを感じさせない
薄暗い公園の前で
ほんの少し立ち止まる
何かが気になったのか
それとも
歩き疲れたのか
それはすでに
ここではないどこかへ
足を踏み入れてしまっているみたいに見える
時々聞こえる
ため息のような大きな呼吸は
かすれていて
喉になにかがつまっているのかと思わせる
そんな息の後に
必ずなにごとか呟いているが
それが少なくとも
意味を
含んでいるようには思えない
蛾が
興味を示したかのように
脚のあたりを
8の字を書くように飛び
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)