季節の中で/落とし子
 
もう少し暖かくなったら
会いに行こう、
なんて思っていたら
すでに暖かくなっていて、
慌てて金をかき集めて僕は
列車を乗り継いだんだ。

空いてる車両の
窓を少し上げながら、
(風がずいぶん強く入ってくる)
季節の移ろいは
はやいものですねって、
つぶやいてみる。

ああ、このまま
どこまで
行ってもいいんじゃないか?

僕の内側で、
昨日まで止まってると
思ってた時間は、
本当に止まってたわけじゃない。
疲れてただけだ。

僕の外側で
うつろう季節は、
僕のことなど
もともと知らないだろうが、
しばらくそのまま
放っておいてくれないか。

君に会えたら
何を話そうか、
とりあえずビールでも飲んで、
夏の予定を聞こう。
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