ある岸辺/妻咲邦香
何故、離れるのか
何故、一緒に眠らないのか
私の魂よ
何故、君だけが自由で
何故、私だけが叫ぶ
さよならも言わないで
涙も流さずに
何処へ行ってしまうのか
こんなに求めているのに
何故、眠るのか
何故、一緒に来ないのか
私の肉体よ
何故、拒むのか
何故、黙っているのか
声も届かず、目は閉じたまま
どんな夢を見ているのか
私にも見せないで
近くにいるというのに
古城に夜が来ないまま、私が夜になり
古城は朝も知らぬまま、私が朝になる
何故、一つでいられたのか
何故、巡り会えたのか
此処でこの手を離しても
また会える時が来たなら
その時はきっと思い出そう
そして再び歩き出そう
もう一人の私と共に
さらば古城を離れ行く舟の
君こそが私にとって
かけがえのない
たった一つの
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