薄明の中で(五)/朧月夜
「エイソスはたしか、結婚していたはずだな?」クーラスは尋ねる。
「はい。彼の妻の名は、クシュリー・クリスティナと言います。
彼女のことを、奴隷という身分をなくした聖女として、
崇める者も多いと聞いています。彼女を利用するのです」
「女は残酷だと、分かってはいたのだが。お前に求めたものは、
そんなものではなかったぞ、フフリナ」クーラスは、目を逸らしながら言った。
「わたしに求めたものは、美醜でもございませんでしょう?」
「そうだ。お前に求めたものは美醜ではない。しかしだ……いや?」
クーラスは目を大きくした。「お前は、エインスベルを巡って、
アイソニアの騎士とエイソスの二人を再び争わせようと言うのか?」
「その通りです、あなた。二人の妻のもとへ、刺客を送るのです」
「そこで一人になった者同士が、殺し合いをするというわけか」クーラスは唸る。
「だが、アイソニアの騎士は未だ一人身ではなかったか……」
「いいえ違います。彼には、イリアス・ナディという婚約者がいるのです」
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