時と町/山犬切
 
9月になればまた学校が始まり、けれど暑さはまだまだ過ぎ去ってくれず、プールに入り終えたような夢見の感じが幻熱のように僕らを冒している 時間をゆるやかにしかし直角に左折するような季節のうつりかわり 教室の左から数えて三列目、前から数えて四番目という中途はんぱな位置に僕の座席があって僕は窓をうつむき見ている デスノートなど落ちることのないそっけない青い空の下 校庭のグラウンドは陽炎にゆれてうねっている 今は生物の授業をやっている 遺伝子について教師が解説している ソラマメの遺伝を例にだし顕性遺伝と潜性遺伝のちがいについて教師は話す 市場という〈外〉にはなたれるまでのゆうよの期間を僕らは過ごしている 仔
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