夜明け/妻咲邦香
 
帰ろう
窓は開けたから
明かりもついたまま
温かいスープまである

帰ろう
足の折れたベンチと
錆びの落ちないすべり台
乗客のほとんどいないバスが走る

ひび割れたコンクリートの垂直の壁を
偉そうな名前の両生類がよじ登る
決まって同じ時刻に響き渡る金切り声
ピアノはソとラとシの間を行き来するばかり
覚えているだろうか
何もかもが優しくて
それでいて自分勝手で

帰ろう
心配事は尽きない
宛てのない旅は止められない
こうして「のようなもの」であり続けるしかない
だから帰ろう
この手を取って

眠る動物園
眠る草食動物
もう食べ切れないよと寝言を言
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