忘却の歌/メープルコート
湖のほとりで吹く風が私に優しい。
朝散歩に人はまばらでこの場所を占拠している気持ちになる。
朝日を受けてキラキラと輝く湖面はまるで私の心のようで
耳の聞こえなくなった私の唯一の癒しだ。
自由空間の切符を手にした私。
私はこの空間の人々を愛している。
人目を避けて生きてきたのは過去の話。
軽い挨拶なら誰でも出来る。
昔聴いた音楽は私の裡に佇んでいる。
人の記憶もあいまいに残っている。
鮮やかなのは幼少期の記憶のみ。
いつしか私も行くであろう黄泉の国。
楽しかった記憶のみを携えて。
湖のほとりで歌う忘却の歌。
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