【批評ギルド】『壁』丘 光平/Monk
 
います。壁一枚向こうが相手の
世界であり、かつそこは断崖絶壁、けして踏み出せない場所です。物理的にお
かしいですけど、そういう空間、僕と彼女のそれぞれの空間が同じ形式で構成
されて、左右対称のように壁を隔てて成り立ってます。
そして彼女の世界に僕がいないか、というとそうでもない。僕自身の本質は彼
女の世界にはないようだが、「現実と世界と事件という細切れの記号」として
は存在してます。その程度に認知できる存在としては「在る」わけです。書か
れてませんが逆もそうなんでしょう。僕の世界ではまた彼女は記号なんじゃな
いか、そうしとこう。そのほうが美しい。
このお話を語っている話者は「僕」
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