夏の影/番田 
 
まる追悼番組の映像を見ることもなく、僕は地位と名声を築いた政治家と、生活苦にあえいでいた一般人の男を結んだ接点とは何だったのだろうということについてを考えていた。二人をつないだ奈良という古都の場所についてを。演説の場所の実行犯の住んでいたマンションからの近さが妙だとして、指摘している人がいる。あらかじめ意図されたものなのか、単なる偶然なのかについてを、今後調べる必要があるのかもしれない。人が殺害できるほどの手製の銃を一人で作ることはなかなか難しいような気も僕はしている。


でも、そんなことを考えながら店を出ると、いつのまにか街は日が傾いて少しだけ涼しかった。無料の自転車置場に僕は歩き出した。そこからどこに向かうのかまでは考えていないのだけれど。


戻る   Point(0)