珍客/凪目
 
ドアスコープ、ドアホン
居る
小さな刃物のつめたい先端がお守り、待ち構える
なにを?
ぼくの
ゼリー状になった
まっかな
しょうどう
なにか言ってる
同じ音を繰り返してる
ぼくにも同じ音が出せる
おまえなんかよりずっと意味のとおる音として
だからだまってろ
でもだめだ
理屈の通じる相手じゃない
無意味になった鍵穴、ドアチェーン
さっきぶりだね……
ゆっくり侵入してくる
無視すんな……
すばやく満ちて広がる
排水口が逆流もできずに鳴いている
窓が埋まる
換気扇が回らない
窓を埋めている
出口のない、海に
足をすくわれる
三半規管が怒鳴ってる
怖い
べとつく生ゴミ
湯気の匂い
赤い寒天
ざんねん
ぼくは
おまえの
なかに
いてさえ いきが できる
重力を奪われた腕を振る
能面に一切れの傷を与える
今日は……ぼくの勝ち
肥大したゼリーが螺旋を描いて風穴に吸い込まれていくのを、最後のひと欠片まで見送る
傷を
塞いでおくよ
感染症対策
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