七夕/凪目
 
小さな顕微鏡を買って、死んだ虫や死んだ葉、花びら、砂粒、髪や皮膚のカケラなんかを、どこまでも大きくして遊ぶ
覗き込んでいると、僕が世界だと思っているもの、それがひとつなどではないことがわかる
そして息を吸う方法を思い出す、僕は、すぐに息の吸い方を忘れてしまう


僕が氷でできていたら、涼を分けられていいのになと思う
しかも氷っていうのは、可愛いやつで、注意して耳をそばだてていると、無意味で小さな鳴き声をずっとささやいてくれるし、装いも、四角くかためられた内側に、破裂した棘みたいのを飼っていてきれいだし
でも、今夜は十分に冷やされた風が入ってくる、背中からシーツの冷たいのも伝わってくる
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