オブジェの令嬢/あらい
 
寝そべれば ただ、砂の城の住人になれた
ビーチボールから空気が漏れ出すような、
答えの見えない穴の空いた口先だけが
時と場所を超え、私に還ってくる。
亡き砂の浜はわだつみに近づいていく
水際に 足を取られて、転びかける。
まなざしをみやれば、死んだ魚の眼を抱いて
転がるように波に攫われてしまった
マーメイドの亡骸みたいな海月に出会う。
掬いあげれば それは沈没船の財宝たちで
サングラスの波や海流の隙間から這って出て
「船虫ばかりね」(ちらりと見る)
――我々、漂着したものが、
美しい貝がらを背負っては、真っ直ぐに進めない
プラスチックのカラダとぎこちなく彷徨い歩いていた。
てのひらから零れた場所や時間を超え、
泪で錆びついては、姿形を変え浚われるという
骨ばった流木の腕、穢らしい眼球の煌めき
ねえ、シーグラス、太陽に殺されたあとの祀り
今更、なにになるというの〈ビーチコーミング〉
あたまがくらくらして搾んでしまった、
そのゆびさきの行方まで追いかけていたいのに
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