涙がこぼれたら/入間しゅか
かすみ草が
軽口をたたくように
洗濯物は風に揺れて
迷うことはよいことだと思う
右頬をつたう涙に
うつらないせかいがあるとは
全くもって知らなかった
紫陽花色のかなしみには
ちょっぴりビターなコーヒー
がよく似合う
嗚呼、答えの出ない問いに
応える必要はひとつもなかった
わたしは燕が低く飛ぶように
浅く深い呼吸を刻む
乳白色の陽光が
まっすぐとハイウェイにのびる
こんなにも
生きた証を辿りたくなるなら
写真をもっと撮ればよかった
レースのカーテンが
暖かい陽のひかりを
吸い込んでいる
窓を開けて
ポケットいっぱいの
かなしさに別れを告げたなら
そっと頬に触れるように
ほらね、なんかいい風
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