溶ける雨/soft_machine
もしかすれば自由を解放するのかも知れない
無秩序な空を降りたその脚に
アスファルトの確かな感触は
嗄れた梅雨を謳歌する蝸牛ら
刺突された町の誰かも知らず
白魚が下流に向って急ぐ夜明
浮力を奪われながらなお進む
だんだん薄まる汽水域で息が苦しくなる恐怖
果皮が蝕まれ糖化斑が腐熟れ
ほじくってこれでやっと種
人工の風が奏でる聖楽は知らず知らずのうちに
人形の背骨で羽撃く衝動を切りとってしまう
何かがくぐもり潜んだこの泡
旅ゆく雲に今すこし甘だつ
目まいを纏めて縫いぐるみ
奇態な別離を確かめやすい、雨
くちびる泣きながらさ迷いながら傘さしながら
アーケイドの破れでぽつり転げる硬めの冗句
見上げる一片のメスを咥えた嘴がゆく
胸の奥までずぶ濡れて
雨に落とされないよう
雨に溶かされないよう
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