陸に上がったワンピースの話/万願寺
がら(当然かれらはおぼえられない)、女はよく歩いた。他のひとは、よく、彼女は丘の裏側まで行ってしまうんじゃないか、いや、実はもう行って帰ってきているのかも、などと噂した。そういったことを噂するのもまた楽しいことだった。
うすむらさきは兎に角、丈夫な足を持っていたので、それでいろんな場所に行けた。彼女の足に踏み固められた丘は、それでも、百年後にはゆたかな森になってしまった。動物達は丘を離れて、さまざまな街へゆき、きっと私達、あなたのに負けないワンピースを仕立ててきますから、と言い残した。
森の葉が、肉厚な南の気候の樹についた葉が、かさかさと揺れて、ちいさな女の子が顔を出した。こっちだ
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