老犬(改訂)/宣井龍人
 
息荒く手綱に寄り添うように
突き出した舌を滴らせ
瞳は年月の重みにやつれ潤む

毛並みの乱れた脚を引きずり
鼻面を大地に擦り寄せて
足元に映る錆びた自分を追う

立ち止まった彼には落陽さえ眩しい
もう追いかけることもない地平線
ハアハアと弱々しく後退りする息

垂れ込んだ耳には聴こえて来る
仲間と戯れ合い走り回った日々
生まれたばかりの風が頬の涙を癒す

息荒く手綱に薄れ霞む体を凭れて
遠い思い出に呼び寄せられるように
また一歩振り絞り命を踏みしめる
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