七月/soft_machine
 
数えきれない魚が泳ぐ空に
見えかくれするオレンジの月
魚はいつかぶ厚い大気をつき破り
真空にとび跳ね
地球を訪れる

季節は色でその姿を伝える
あるいは音やにおいや風向きで
おおきな手足に揺すられ
目をもつ廃屋の柱にうまれた
エレガントな蝉
艶つやうずくまる
運よくばらばらにもされず

振りおろされる鎚
金床にちる
稲びかり
涸れた側溝で微睡む
卵をかかえたいっぽんの蛇
ぽとりと落ちた
蛍の目
まっ白でまっ黒でたまに乾涸びたまっ赤
ころがる甲に晒された曾ての消化器
宇宙に唯ひとつの腹綿

にぎやかな無言
きみの目覚めの無表情
融けかかったアスファルトの上
炙られる蠕動
誰も知らない月の虫陰


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