立夏/凪目
 
聞き覚えのない鳥の声
ちゅーちち
ちっち
つつじ
ちゃいろく縮んでもなお派手な花
錆びた看板
(株)亀や
空に帯を広げる雲
ピアノの音
つまずきながら繰り返すフレーズ
醤油とみりんを煮る匂い
ほんの少し開いた窓から隣人の独り言
 あー
  あ、うん
ちらしの入った郵便受け
からになった郵便受け
本当はからじゃない
出し忘れた資源ごみ
明日は可燃ごみ
焼却炉で手紙ごと火だるまになる僕
臆病のつけ
六時の鐘が六回
妄想を百回


魂を明け渡す気概があんたにあるのか?
飲むたびに問われてる
僕はなんかねむたいこと言って、睥睨される
でも口ん中が消毒
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