暗がりで手を洗う/中田満帆
暗がりでくそをして、
暗がりで手を洗う
洗面台にも、
浴槽にも、
魂しいのおきどころが見当たらない
たしかなものはタオルだけで
そのタオルもひどく汚れてるのはいったい、
なぜかなのかを思索してる
かつて保護房の拘束のさなか、
看護人どもの見守るまえで
くそをさせられた辱めを懐いだす
あのときの怒り、そして諦め、
すべての人生でもっともむきだしにされた悪意と便意
見いだされたもののなかでもっとも無様なおれ
恍惚のない不安とともにいまでも、
いまでも取り残されるおれが
この室で静かに叫んでる
人間性よ、
おまえはおれを見
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