媚薬エクスプレス/壮佑
?緑青色に腐食した月面の、クレーターの影に突き刺した太鼓ばち指を引き抜くと、穴から狒狒の呪術師達が踊り出て来た。俺は奴らの力を利用して、光速で飛ぶ闇夜と皮膚の間の一瞬の空隙に飛び移らねばならない。虚空に聳え立つ山の頂で焚かれた狼煙火が、ディストーションの効いた重低音を響かせて燃えている。野卑た歌声とバカッぽい踊り、星を銛で突いて食う奴らの心拍はトチ狂ってREDを示したままだ。ウザウザと気流は蠢き帯電した下半身が捻転を繰り返す。その勢いを駆って俺は媚薬急行に飛び乗った。
紅い悪夢の湿原に罠を仕掛けろ。マダラ蜥蜴の妊婦達を捕獲して分娩姿勢を取らせたら、腐臭を放つ意味の汁を分泌する眠りの皮を剥い
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