仰向けの蟹/自由美学
 
皮ジャン男のやっすいダンディズムを横目に
紙ナプキンのミサイルを作る朝
ディスプレイの中では砲撃音がさざめき渡り
手足をバタつかせた蟹たちが逃げ惑う
川底に赤い砂煙が巻き上がると
ファーウェイのスマホを持った少年が
ぬかるみでひっくり返ったむき出しの命を
歩きスマホでさくさく踏んで行く
町はうららかな日差しと蒸した火薬の匂いに包まれ
まっすぐに迷走する風は春の胸ぐらをつかんで問い詰める
枝葉を掻き散らし、泣きながら、
くの字にうねる人々を儚んで柳と身もだえる

鉢植えのオリーブに水をやって私は出勤する
そして今日もまた一日が始まる
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