溜息/鷲田
 
遠い記憶への贈り物は
世界の見える景色を透明に塗り替える
瞬間は瞬間との出会いを祝福し
ありのままの僕等はただ歩みを繰り返す

支配された感情の危うさに飲み込まれないように
カラッポになった今が指す光に照らされる
キラキラと窓の上から陽の明かりが差し込む
12月の乾いた空気の匂い

足元にある未来が現実へと変化した時に
確かに、確かに
僕は僕のままだった
確かに、確かに
君が君のままである通り

影に内在された一塊の暗闇は
朝を待つ街のネオンに語りかける
最早、言葉が消えた意識の裏で
思考は偶に僕に嘘をついてくる

感覚が正直な大空の雲は
いつも白く流れては行く
目的地などありもせず
結論などもありもせず
ただ流れて
ただ流れて行く
まるで冬の日に呼応する
この白い溜息のように
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