uncertainty principle gods substitution/mizunomadoka
カップの縁に口をつけ
液体を飲むフリをする
あの子は消えた
砕けた十字架が転がってる
脈拍と体温を下げて
周囲をスキャンする
生体反応はない
けれど
フルーツスタンドの軒先に老人が立っている
「あなたが神なの?」
「やれやれ、説得は失敗か。武器など捨てろと言うたんじゃが」
「私を日曜日にして」
「ここはコンピュータの中じゃろう? よくできとる」
「私を日曜日にしなさい!」
「残念ながら儂にはできんよ」
老人は砂のついたリンゴを拾い上げ
袖で拭って匂いを嗅ぐ
「すこし歩かんかね? あそこの海まで」
海風にまかれた砂がスカートに当たってパラパラと音を立て
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)