ごんごちー/ちぇりこ。
六月の水で世界が浸される頃
どろどろに泥濘んだ地面から
ごんごちーが現れて
悪い子どもを地の底へ引くんだって
「ばあちゃんがゆってたもん!」
赤い顔をしながら稲村さんは言う
今日は青い空の顔が青い空だから関係ねーし
吉田くんがそう言うと
稲村さんはボール球を四球見送って、振り向きもせず家へと帰って行った
まだ夕方の五時のサイレンが鳴る前だってのに
ごんごちーの話ならぼくも知ってる
悪い子が後を絶たないのは、ごんごちーの不徳の致すところ
とか思って地面が泥濘むまで大人しくしているタマでは無いし
悪い子は代々この集落からも量産され続けている
眼の悪いよしみ屋
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