昨日、私は山に向かった/山人
 
 昨日朝、山に向かおうとしていたが、気は進まなかった。空は曇り、山岳は霧に覆われていた。つまり一定の高度以上は悪天ということは予想できた。
 家人に準備してもらっていた握り飯はすでにできていた。私は無言で母の線香を上げ、飯を食い、それを持ち去り準備にかかった。気分は乗らなかったが、行かなければならなかった。それは義務感というべきものなのかなんなのかはわからなかったが、行くことしか考えていなかった。
 雪の有る時期の山には登山口となどと言うものはない。登山道は雪のために存在しないからである。除雪の終点が登山口となる。やはり登山口には私以外に山に行く奇特な人種はいなかった。そんな私を歓迎してくれる
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