帰途/中田満帆
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三沢では雨すらも言語になる 帰途を失ったひとがレンタルビデオの駐車場に立つ 傘がない秋口にはからっぽのボトルがよく似合う したたかに酔い、そして瞑目するあいだ、すべての鳥が、カチガラスになったような錯覚をした それは10月の暑い夜 冷房装置の悪夢が膨張するアパートの室で、やがて人参が目醒め、鶏肉が暴れだすだろう 夜という夜の、寄る辺のない旅とともに
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天使が墜落する週末 演技論がわからないという理由で、飼い犬を撲殺した男がいま、便秘を耐えている 蟋蟀の眼のなかでフレームアウトする通行人がひとり、またひとりと失踪する エキストラがいないのだ 制作進行は悩
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