読書における娯楽性と読破という苦痛について/山人
 
時代背景は明治や大正の実録的な話だったので、自分的には芸術性はもとよりノンフィクション小説としての価値は高く、かなり印象に残っている。映画化された日本陸地測量部の実録である、「劒岳・点の記」や、富士山気象観測に尽くした野中到夫妻の「芙蓉の人」など迫真に迫るものであった。新田は役所勤務が前身であったようで、作家としてはあまり評価されていないようではあるが、描写も上手いし骨太の文体は好きである。 
 文豪と呼ばれた夏目漱石の「こころ」は描いていたイメージと大きく違っていた。柔和な印象の夏目の外観を、文体にもイメージしていたのだが、まったく別ものであった。繊細というか、内面的であり、ストーリー性はある
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