昔の幻/番田
してキャスターが壊れてしまったものだった‥。先々の旅程を考えると絶望的だった。そのまま、それをひきずるようにして、僕は歩いた。それから、ベンチの上に、浮浪者のように見える、少しだけ黒ずんだ二人で並んで座っている男を見た。運河はどこまでも続いているようだった。印刷してきた地図を頼りにしていたが、ホテルにまではなかなかたどりつけなかった。僕は旅先でいつもそうするように、女の子に声をかけて道を聞いてみたら、彼女から、かなり無愛想な返事が帰ってきたことをよく覚えている。彼女たちはどのような対応をして、どれだけのチップを渡したら喜ぶのかは、よくわからなかった‥。コンビニもなく、どこで何を食べればよいのか良いのかと、僕は悩んでいた。
トランクの中にはシンクパッドが入っていた。それなしには、デジカメの写真を保存し続けることはできなかったのである。当時はメモリーカードの容量はかなり限られていた‥。そういう意味でも、旅先ではややかさばるモバイルPCを持ち運ぶ必要があった。僕はときどきそれでホテルで音楽を聴いていた。特に小田和正を郷愁に浸りながら聴いていたものだった‥。
戻る 編 削 Point(2)