或る友情 ―Oに捧ぐ―/服部 剛
 
青みがかった思春期の
あの日の僕に
夢を届けてくれたのは
夭逝の歌手・Oだった

時は流れ
同じくOが好きな友達に
十数年ぶりで
遠い街まで会いにいった

連絡をくれた理由(わけ)は
ど壺に嵌った失恋で
カフェで苦い珈琲飲みながら

静かに僕はうなずくだけ
しょげた背中に手を置くだけ
車で宿まで送られた後、そっと祈った

    * 

翌日、同じ店で一人の夜に
昨日の場面を脳裏に浮かべて
──さあ帰ろう
席を立ったその時、店内に
あの懐かしいOの歌が流れ始めた







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