秋〜冬/短詩群/ちぇりこ。
 
「廃墟/光」

その人は
十月の淡い光がこぼれている
窓際に立っていた

下生えを啄む鳥たちが
驟雨の後に立ち去った庭で
透過性の
グラン・ジュテ
軽々と
その人は
超えてゆく

退化する光が教えてくれる
(かつて ここに 時間が
あった)

朝の陽が 射す
砕け散った夜を拾い集め
(いつか しぬために
うまれてくる 時間の
ための)

「書簡」

音も無く
積み重なる空と
ルチル混じりの雲間から
つめたい水を
生成する
朝の縁に腰掛けて
秋の結び目を解く鳥達との
団欒

無言のうちに
届けられた書簡を
開くこともなく旅立
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