the beach boys strikes again/中田満帆
が人生の本質なんだ
黒い膚の馬が駈け抜ける丘、
不定形が死者ならば、
定型は生者なのか
粒子を崩壊させる一滴の宇宙や、
ジューク・ボックスのなかで精製される量子とが、
円環状の馬場のうえをひるがえる時間が、
時には涙さえ超越する
立ち去れ、
立ち去れ、
子供時代に見たことのある、
見覚えのある男が話す
あのとき、
きみがぼくを突き放したときから、
ぼくの解剖学が狂った
心臓のかわりに、
死者を飼うからだを、
ここに持ってしまったということを
なべて夜は温かい月に照らされ、
いま住宅地図を疾駆する
ベニスの北から、
シカゴの西まで、
神戸の南から、
タンジールの東まで
生者が飢え、
死者が富み、
夜霧の発つ兎の巣穴で、
たったひとり、夜を信じない男が、
死者との婚姻を果たし、
ぼくの墓へと、
たどり着く。
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