祖母と故郷と、夕暮れと。/ちぇりこ。
 
うして また新たな白地図を埋めるようにしながら暮らしている
窓の下を自転車に乗った子どもの群れが通過する 夕陽に追われ敗走する十字軍のように もの凄いスピードで通過する
ばあちゃん ぼくはもうあの頃のような
小さくて おどおどして震えている子どもじゃあないんだ
仕事も慣れてきたし一人暮らしも 彼女だって
だから もう大丈夫だから
そう言って空を見る
みかん色の夕陽と同化したような祖母の顔が
この街の空いっぱいに広がっている
祖母は少しだけ笑ったような顔をして
「そうか」タンポポの綿毛につかまり薄暮の街並みに霧散してゆく
それ以来 祖母はぼくの周りには出なくなった
けれど
ぼくの部屋はしばらくの間
一日中 干したあとのお布団に残っている
お日様の匂いがしていた
そう言えば忙しくて
年末年始も実家に帰らなかったから
このGWには久しぶりに帰るか
ぼくは煙草に火をつける

飛行機雲


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