屠所の羊/あらい
 
腹いせに、氷のような山を登る昇る
あと一歩というところで
八つ裂きにしても飽き足らないほどの
ここは聖なる場所、ここは宇宙の中心
人類が残した足跡と言われる
立ち腐れたバンガローに
疲れ立てたようなむさくるしい者が
見る影もなく
荒れるに任せた渓間に、疲れ果てた舟を構える
それで、また
打ち切られた錯覚を、しじまに偲ばせる
ひなた雨、猫のようにと、盗人は心を寄せる
メモリは僅か、ホームシックを彷彿させ
間隔が崩れ、振り返るときに、
いとおしがる、囀りが自覚するのは
退席した後、
堆積した址で、苔の生え おしあてられた
大木に
ぴしゃりと翅た、おとなしのかまえ
それで、つりあって動けぬ
物静かな羊、そのものでありたかったのに
櫻の苑
眠りから褪めてしまったのだ。
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