panorama/mizunomadoka
月までの
長い階段を
上ってる
永遠みたいな
道のり
階段端で
休んでいると
月側から下りてきた
子供が隣に座る
何も言わずに
じっと私を見てる
腕時計を外して
その子に差し出す
雪の日
ダイナーからの帰り道
母がくれた
父の形見
そろそろ行かなくちゃ
立ち上がって
手をふり
また階段を上る
遠くで光る
誘蛾灯のような
月の輪郭
手摺りをつかんで
振り返ると
足跡は白い糸のよう
あの子はたぶん次の私
広大で静謐な夜の底が
私たちの住み処
月も通過点
今まで行けなかった場所
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