panorama/mizunomadoka
 

月までの
長い階段を
上ってる
永遠みたいな
道のり

階段端で
休んでいると
月側から下りてきた
子供が隣に座る

何も言わずに
じっと私を見てる

腕時計を外して
その子に差し出す

雪の日
ダイナーからの帰り道
母がくれた
父の形見

そろそろ行かなくちゃ
立ち上がって
手をふり
また階段を上る

遠くで光る
誘蛾灯のような
月の輪郭

手摺りをつかんで
振り返ると
足跡は白い糸のよう

あの子はたぶん次の私

広大で静謐な夜の底が
私たちの住み処

月も通過点
今まで行けなかった場所






戻る   Point(16)