煙に巻かれて/
静
煙草の煙越しに古い写真を見る
空は宵闇を纏い人の声も消えて
瓦礫に埋もれ消えたはずの声が
机に置いた珈琲に淡い波紋を作る
置時計の古びた音が心を刻む
古書の匂いと共に今を生きている
この場所で朽ち果てたいと願う
過去に抗える静けさがそこにある
客人が煙草を時々寄越してくる
私には悼むものが多すぎるから
全ての声が眠りにつくそのとき迄
焦げ付く煙に身を任せたいと思う
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