風が/soft_machine
 
風が吹いていた
千本の針を手ひどくかき回すような
天蓋の裂け目から吹きこんで
ざらざらはしる

風が吹いていた
あたらしいところに今朝もある窓に
ゆっくり手をふるお月さま
澄んだ金星もつれて

風が吹いていた
ひとりの兵士がうす暗がりの午後を
ただ呆然と
はいつくばって見ている

風が吹いていた
子どもをだいていた女の瞳から
ころり、と なみだが転がった
この風ならば、と
風に
なみだを
あずけていいんだ、と

風が吹いていた
目も鼻も唇も
いいように叩かれた
じゃあ泣けばいいんだ、泣いたって
構わないんじゃないか、と
大人も
子どもも

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