精神病院でのある一日/朧月夜
 
者の人は、ワゴンのスライドドアをやや勢いよく閉めて、去っていく。コカ・コーラの配送者のほうも、配達員の人が荷下ろしを終えて、車をバックさせ、今敷地の外へと出ていった。
 今度は、母親と娘さんの親子連れか、
「がんばって!」
「え?」
「がんばって」
 まるで病院のなかへ向かって話しかけているように……。
 わたしのこの地球(ほし)での定位置はどこだろう。わたしも立ち上がって、ジーンズのお尻についた土を手で払う。さて、こんなところ(精神科病棟)にも、人間関係はあるし、そこには社会がある。自由も、制約も。
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