先輩/soft_machine
 
宝満のすそに立つ昇降口や
安い学食とおばちゃんの高低差を
万花でうずめる桜木があり
雨にやわく溶かされる列を
内庭の喚声たちが
焼却炉にほうり込んではたち去る

ねぇ先輩と呼んだり呼ばれたり
斜光が伸ばされて
さざめく踊り場でそっと触れるたび
まなざしを突きつけ
抱えきれなくなった恋句

下駄箱に渦まく罠や
水泳帽に仕掛けられた謎
あまりに淡く夕映える下校のチャイム
黒い消しゴムをひとり試した

砂のノートにとじ込まれた学園で
今もゆれる蜃気楼を見ている
頁を破ける筆圧で見ている

先輩へとかえる車輪の合唱を
宰都の雪が祝福している


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