曙光・ドレスデン/useless
 
一睡も出来なかった朝の光に浮かび上がる緑色に淀んだ外堀は悠久のエルベ川ではなく
古ぼけた駅ビルの飯田橋はヨーロッパのテラスと呼ばれるドレスデンではなく
不機嫌そうに行き交うサラリーマンはカスパー・デイヴィッド・フリードリッヒではなく
乗り越えるべき偉大なゲーテは現れず道を指し示すシスティーナの聖母は見えなくても
鉄骨の組み合わさる駅舎の無機質にこそ世界と未来は担われるべきであり
現実を憂い友と語り明かした夜は真実だから透明な気体を黒い袋に詰めて
南北線で二駅丸ノ内線で三駅その先の霞ヶ関駅に僕は死を置いてくる
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