終章/Lucy
分厚い雨雲の真ん中が綻び
底なしの穴の遥か遠く
水色の空が薄氷越しに透かし見えると
遠い夕焼けが破れ目の縁を
なぞるように湿らせる
逝く人の
輪郭を切り取るだけの硝子窓
黄昏が重い緞帳のように降りてきて
地平線をすっかり塞ぐ少し前
カーテンコールのスポットライトが
僅かに残った木の葉の面で
ゆっくりと乱反射する
それ以外に何が起こるというのだろう
今更間に合わない反省をパレットの上で混ぜ合わせ
思い出を清らかな絵の具で塗り替えようとしたところで
綻びた雲と同じように
季節は境界を見失い
声を失い
逝ってしまった黄昏の裏側に
ぼんやり取り残されるのだ
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