シルエットの秘密の扉/st
シルエットのほうが美しい
とでも
言いたそうに
絵画のなかで
熱心に
シルエットを見つめているのは
シャルロッテに恋をした
ゲーテという詩人
若き乙女の
可憐なシルエットが
好きで好きでたまらない様子
乙女の素性を
誰にも知られたくないから
自分だけが知っていればいいから
ゲーテは知っていた
そこには
秘密の甘い香りと
別世界への扉がある事を
今日も
朝陽や夕陽が魔法をかけて
街全体がシルエット
地平を飾るのも
連山の美しいシルエット
なぜだろう
シルエットにひかれてしまうのは
輪郭だけのはずなのに
昼間見る景色とは違う
何かがある
シルエットに
なってしまったビルの
屋上のアンテナに集い
羽をやすめながら
あかね色に染まる地平を見つめる
二羽のカラスが
神秘のベールにつつまれてゆく
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