風の折れる音/草野大悟2
 
風を食べていた鳥は
夢を食べはじめるようになってから ずっと
腹をすかせ
風は
その鳥を食べたせいで
空を吹けずに
地を這うようになった

たくさんの綻びた男たちと
肌をあわあせてきたは石竜子(とかげ)は
収納ケースの中から
ほつれた糸をもてあましている男を選びだし
雑巾にして
零れたミルクを一度だけ拭き
涼しい顔をして
ゴミ箱に捨てる

空いろの紅娘(てんとうむし)は もう
ひまわりを乗せることができずに
ぽつん、と埃をかぶっている
                 
それぞれの挽歌が
それぞれの殻をつけたまま
海の中をただよい
とおく
はるか
とおく
青空のかなたから
ポキン、と
風の折れる音がする        
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