だれもかれも食べている/凍湖(とおこ)
 
生きているかぎり
食べない人はいない
だれもかれも食べている

そのありようは
そのままその人の日々を反映して

丁寧に手をかけた一汁三菜も
インスタントに湯であたためたものも
凍えた手に渡されたおにぎりも

器物もさまざまで
作家物の陶器もあれば
メラミン樹脂の割れない器
紙皿に割り箸

なかには、ボトルを高くにつり上げて、そこから一滴一滴
おなかに直接、一時間かけて甘やかな液体を落とす
上体を起こしてベッドに寄りかかり
お気に入りの音楽を流しながら
最後の一滴が終わるのを待ち

食べている
それは時間
たしかに存在しているその人の

お米を炊き上げる
白くふんわりとした湯気
そのあたたかな質量に
急に喉元にせり上がるものがあり
口をおさえて、しばしじっとする
そんなこともありながら
食べる

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